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【第3回】スタートの奥義(松尾啓史・角南一如・前田淳)







【山陽のスタート名人・前田淳】

角南が語るように山陽オートの伝統は「差して勝つ」だ。
小林啓二、岡部聡。山陽レジェンドたちは序盤の攻防で劣勢でも、しぶとく、したたかに、差して、さばいてファンを魅了してきた。

しかし、この男は山陽では異質な存在として、GⅠタイトルを奪ってきた。

山陽屈指のスタート達人、前田淳もスタートについて懇切に説明してくれた。
「自分は先輩のアドバイスで上達させてもらいました。
自分が1級車に乗り替わってしばらくした当時、山田真弘選手のスタートが本当にすごかったんです。

山田さんは自分にすごくわかりやすく、親身にアドバイスしてくれました。
その教えを聞いているうちに、だんだんとスタートが行けるようになりました。

今でも、よく覚えているのが、自分が山田さんの外のハンデに置かれるレースがあったんです。
そのレースで自分はうまく切れて、山田さんより先に行けたんです。
レース後、山田さんが言ってくれたんです。”いやあ、いいスタートだったね!”と。
もう、本当に自信になりましたよ、あの言葉を頂いた時はね…。

自分は0メートルオープンなら1枠がいいです。誰もインにいないわけですから、わがままに切れます。
もし、自分がスタートを失敗しても、となりに迷惑をかけなくていいですから。
だから8枠でもいいです。もし、自分がミスしても外に行けば誰でも迷惑はかけずにすみますからね(笑い)。

自分がスタートで集中しているのは、自分よりも外の選手に行かれないようにすることです。
それがうまくできたら、結果的にインの選手をつぶせているかもしれませんからね。

最初からインの選手をつぶしにかかると、やっぱりどこかで冷静さを欠いたり、変に力んで失敗してしまうので。
僕にとってのスタートとは?そうですね、自分の下手さを補ってくれるアイテムです!」

(取材・構成、淡路哲雄)

レースデータ提供:公益財団法人JKA
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